オーガニックの黒船襲来?有機JAS規格の抜け穴を狙うアメリカ

日本とアメリカが、有機農産物規格の同等性に合意しました。
2014年1月1日以降、日米間において、自国で認証を得ていれば相手国で認証を得ずにオーガニック(有機)として農作物とその加工品を販売してよいことになります。
この合意により、両国の有機製品の輸出入が盛んになり、市場が活性化することが期待されるとニュースでは報じられていましたが、実はこの合意に関して少し奇妙な点がありました。合意に関する発表の仕方が、日米政府間で大きく異なっていたのです。

農林水産省は、日本からアメリカに自由にオーガニック農作物を輸出できるようになると輸出面の規制緩和のみを発表(農林水産省サイト)。一方、米農務省は相互の同等性に合意したと発表し、合意の対象外である畜産品やアルコール飲料の扱いにまで言及しています(米農務省サイト)。

いったいなぜ、両国間でこのような温度差があったのでしょうか。これを検証する前に、まずオーガニック基準の背景を説明しておきます。

国ごとに異なるオーガニック基準

オーガニックの基準は、国ごとに異なります。日本には農林水産省の「有機JAS」、アメリカには農務省全米オーガニックプログラム「USDA(米農務省)オーガニック」、EUには加盟国共通のオーガニック認証システムと、国や地域ごとに規格があります。いずれの基準でも、認証を得ていない製品に「有機」や「オーガニック」と表示して販売することを禁止しています。

しかし、これでは海外にオーガニック製品を輸出したい企業は、輸出先ごとに認証を取得しなければならず、手間もコストもかかります。オーガニック製品の普及を妨げる要因にもなりかねません。そこで、自国と他国のオーガニック認証システムを同等とみなし、生産・加工した国で認証を取得し、輸入時に証明書を添付すれば、輸出先の国での認証を取得せずに「オーガニック(有機)」と表示し販売してよいとする仕組みがあります。これをオーガニックの「同等性」といいます。

現時点で日本が同等性のある国として認めているのは、EU、オーストラリア、アメリカ、アルゼンチン、ニュージーランド、スイス。一方、アメリカが同等性合意を結んでいるのはカナダとEUのみ。つまり、これまでは日本が一方的にアメリカのオーガニック基準に対して同等性を認めていたのです。

よって、農林水産省が日本からの輸出規制緩和のみを発表したのは、既存の事実を敢えて発表する必要はないということなのでしょう。

では、アメリカ側が、日米共に同等性を認めたのは初めてというトーンで発表したのはなぜでしょう。

形式上は日本側が同等性を認めていたものの、実態が伴っていなかったからでしょう。今年4月に(恐らくEUの要請で)日本側が規制を改定するまでは、外国のオーガニック製品に有機JASマークを貼付できるのは、”有機JAS制度に基づく認定を受けた輸入業者”のみでした(改定後は、他国の認定事業者も貼付可能)。さらに、USDAオーガニックで認可されているが有機JASでは認可されていない物質の使用を日本側が認めておらず、実質的にはコスト・処理面共に有機JAS認証を取得するのと大差なかったのでしょう。

抜け穴が多い有機JAS規格

そして奇妙なことに、アメリカ側は今回の合意の対象外である畜産物やアルコール飲料に関しても言及しています。米農務省のウエブサイトでは、”USDAオーガニック認証を得ている有機JAS対象外の製品(肉、乳製品、ハチミツ、繊維製品など)は、これまで通りJASマークの表示なしに日本でオーガニックとして販売してもよいだろう”と明記。一方、”農作物・加工品以外の有機JAS認証製品をアメリカに輸入する際には、USDAオーガニック認証が必要”としています。

なぜ、敢えて合意対象外の製品に関して、このような発表をしたのでしょうか。

実は、この合意が農作物とその加工品のみに限定され、畜産物やアルコール飲料などが対象外とされているのは、日本の有機JASが農作物とその加工品のみを対象としているからです。
畜産物の有機JAS規格もありますが、あくまで「任意」です。
つまり、農作物と異なり、有機JAS認証を得ていない畜産品にオーガニックと表示することは、厳密には禁止されていないということです。さらに、有機JAS畜産物の対象となる動物にはミツバチが含まれていないため、ハチミツは有機JAS認証を得ることができません。そして、アルコール飲料は、農林水産省ではなく国税庁が有機の表示基準を設けており、これも農林水産省管轄の有機JAS規格の対象外となっています(アメリカも、農作物は農務省、畜産物は食品医薬品局、アルコール類は財務省の管轄なので、当初はオーガニック基準が煩雑でしたが、現在は農務省のUSDAオーガニック基準に統一されています)。

つまり、有機JASは意外と抜け穴が多いのです。

有機JAS規格が農作物と加工品以外を対象としていないのですから、同等性合意に畜産物やアルコール飲料を含めることはできません。アメリカはここに目をつけ、これら製品を有機JAS認証なしに輸入することを非公式に容認したのでしょう。

日本にとって損か得か

さて、この合意により何が起こるのでしょうか。

AP通信によると、米農務省はアメリカから日本への輸出額が3年で3倍(8千万ドル(約78億円)から2億5千万ドル(約243億円))になると予測。米オーガニック貿易協会によると、アメリカのオーガニック市場は2012年で315億ドル(約3兆円)、オーガニックマーケティング協議会によると、日本は2010年時点で1,200~1,400億円と、アメリカ市場の方が圧倒的に大きく、アメリカは既に価格訴求力もありますから、この合意を機に増えるのは、日本からアメリカへよりもアメリカから日本への輸出でしょう。特に農作物以外は証明書も不要なのですから、これまでそのことを知らなかった業者もこの発表により日本への輸出を検討し始めるかもしれません。

では、これは日本にとって良いことなのでしょうか、それとも悪いことなのでしょうか。

安いアメリカ製品が入ってくるのですから、日本のオーガニック生産者にとっては一時的に打撃となるでしょう。しかし、市場が活性化し、農薬や添加物を使った慣行品とオーガニック製品の値段の差が縮まれば、より多くの人がオーガニックを買うようになるでしょうし、需要が増えれば農家もオーガニックに切り替えるようになるでしょう。これにより、不必要な農薬や添加物の使用量を削減でき、土壌や地下水の汚染が減り、因果関係があるとされる現代病も減るかもしれません。オーガニック製品の普及により人々が安心して暮らせる社会になるのなら、長期的には良いことといえるでしょう。

もちろん、オーガニックが万能というわけではありません。著書『サスティナブルシティ ニューヨーク』で詳しく説明していますが、オーガニック農業の大規模化により慣行農業と同様の問題が起こるなど、オーガニックにも問題はあります。それに、遠いアメリカからの輸入が増えることで、輸送時の温室効果ガス排出量の増加も懸念されます。しかし、農薬、添加物、遺伝子組み換えなど、オーガニックの普及により解決できる問題は多いでしょう。

生産者にとっても、競争が起こることでより良い物を作り出すようになるでしょうし、外国産と異なり地の利を生かした販促もできるでしょうから、一概に海外産が入ることが悪いわけではないと思います。

アメリカでは、オーガニック専門の大手スーパーが各所にあり、一般のスーパーの多くがオーガニック食品を取り扱い、ファーマーズマーケットはイベントとしてではなくスーパーの代わりに日常的に利用されています。アメリカは環境面で反面教師とすべき点が多々ある国ですが、ことオーガニックの普及に関しては、日本は倣うべきだと思います。

今回の合意を機に、より多くの日本の消費者が気軽にオーガニックを購入できるようになり、より多くの日本の農畜産家や食品業者がオーガニック生産に切り替えるようになることを期待したいと思います。

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